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「……あんたも、霊力(チカラ)あるんだ。」
「は……?」
漆黒の瞳に意識を奪われていた彼は、静かに口を開いた彼女の言葉を理解出来なかった。
見るからに動揺している少年を見て、少女は少しあきれたように小さく息をつく。
「だから、霊力持ってんでしょって聞いてんのよ。あんたの場合、すごい冷たいわね。」
少年の周りを指差して、少女はつんと言い放った。
そんなことはこの前金髪の女死神に言われて知ってる。
自分が霊力を持っていること、そして一緒に住んでいる祖母が体調が悪いのも、そのあまりの強さ故であるということも。
『このままじゃあんた、おばあちゃん殺しちゃうわよ。』
あの女の言葉が心に重くのしかかったのははっきり覚えている。
それで、彼は自身の霊圧をコントロールし使うため、渋っていた霊術院へ行くことを決めたのだ。
「ねぇ?」
ふと、考え込みすぎて存在を忘れかけていた少女の声に、少年は我に返る。
そして彼女の周りにも霊圧が漂っていることに気づいた。
「お前もか。案外いるもんなんだな。」
そう言って彼も泉の畔に腰を下ろす。
霊圧を持っていることを指摘され、少女は驚いたように目を丸くした。
「霊圧感知能力もあるなんて… 私今霊圧抑えてたんだけどね。」
少女がくすっと笑って言う。
確かに、霊術院に行かずに霊圧感知できる者は滅多にいない。
だがそういう彼女も少年に会った瞬間、彼の霊圧を感じ取っていた。
そして今も霊圧を抑えていたなどと。
何だこいつ……。
少なくとも声には出さない方がいいようなことを思い、あえて彼女の言葉に答えずにいると、暫くの沈黙が訪れる。
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