ある赤鴉の決心

6/8
前へ
/68ページ
次へ
「モモじゃないと駄目なんだよ。」 抱き締められたまま耳元でそう囁かれ、モモがぴく、と反応する。 余りにも嬉しい言葉。 モモは意を決したようにぎゅっと唇を締め、ウォルターを見上げた。 「…よろしくお願いします、ウォルター。」 笑みを浮かべてそう言うと、彼も満面の笑みで返してくれた。 そして。 ウォルターの顔が近づいてきたかと思うと、視界を赤が覆い、何かが唇に触れた。 「…………!」 何が起きたのか理解したときには、モモの体温は急上昇。 ウォルターの方を見ればさっきと変わらない笑みを浮かべたままだ。 「周りに人がいることを忘れるなよ、二人とも。」 その声にはっとしてモモは周りを見渡す。 なかば呆れたように笑うカルロに、自分達を微笑ましそうに見ているモニカ、そして年相応に顔を真っ赤にしているアンディ。 三人の目の前でキスなんて…! もはや居たたまれなくなり、モモは両手で顔をおおう。 「羨ましいだろ、カルロ。」 「馬鹿を言うな。人前でキスするなんて節操のない男に、可愛い妹をやっていいのかと迷ってるところだよ。」 「迷うもなにも、モモがいいと言ってることに口挟むなんて妹離れが出来てねえな。そこは認めとけお兄ちゃん!」 .
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加