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10体近くのアクマの死体。
それはちょうど今倒されたようで、哀れなアクマたちは次々に消滅していく。
そしてその真ん中で、アクマの魂を見送るように空を仰ぐ少女の姿。
咄嗟に身構えたラビの斜め後ろにいるファインダーを、ラビは手で制す。
すると、ラビ達の存在に気づいたのか、ふと少女がこちらを見、その藍色の瞳に二人は捕らえられた。
瞬間、ラビが何か悪いものを見たかのように目を見開いた。
「蓮……!?」
「待ちくたびれたわよ、ディック。」
少女が、微かに笑みを浮かべて彼の名を口ずさむ。
ディック。
それは、ラビの前の記録地での名前。
名前を捨て、ブックマンとして旅に出た彼の48番目の名だ。
「本当に………蓮、か…?」
「やだな、当たり前でしょ?」
もう会うことはないと。
そう思っていたのに。
記録地での交流はうわべだけ。
ブックマンたるもの、そんなことは常識だ。
黒の教団に来るため、いつもと同じように名を変えて、48番目の記録地のことも、容易に忘れたと思っていたのに。
まさか一目見ただけで思い出せるなんて。
彼女は、前の記録地だった村にいた普通の少女―蓮。
…ディックが惚れ込んでいた少女だった。
最も、その想いを意識した暁には彼はブックマンではいられない。
意識しないように、目を背けていた想いだった。
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