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ゆっくりと少女がラビに近づく。
そしてその右手には、十字架を模したブレスレットが煌めいている。
「蓮……お前も、神に見初められたのか……!」
そのブレスを見て、ラビが苦しそうに言葉を絞り出す。
蓮は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに嬉しいという笑みとはかけ離れた、感傷的な笑みで笑った。
「……皮肉よね。 神なんて信じないとか言ってた私が、神から力を与えられるなんてさ。」
寂しそうに手首のブレスを見ながら言う蓮。
彼女の生まれた村は周辺地域の戦争に巻き込まれ、多くの村人が死んだ。
彼女の父も母も妹も。
「私もさ、びっくりしたんだよ。これこそ恨んだよ、神に同情されたみたいで胸くそ悪かった。………けど、ばあちゃんが背中押してくれたから。
クリスチャンだった母がくれたんだって。」
顔を上げて、蓮はしっかりラビを見つめる。
その藍色の瞳に灯る一筋の光を見いだし、ラビは思う。
よかった、と。
ディックが村を離れるとき、彼女はとてつもなく不安定だった。
ブックマンなんて止めて、彼女の隣にいたいと何度思ったことか。
だが、ディックがブックマンという自分の運命に歯向かわず前に進んだのと同じく、蓮も運命を受け入れて前に進んでいた。
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