一 異世界

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 達子は持っている剣にポカッと叩かれ、そう言われたので恥ずかしい思いをしたらしい。「うっさい」と一喝して渋々紹介する。 「あたしのこれは『朱鋭』っていって、司馬家の宝なのよ。それで、これには『四聖』の朱雀が宿っているのよ」  そう早口で一息に言ってのけた。 『はい、オッケー。 ってわけでヨロシクね、龍二君』 続いて泰平。 「僕のは『玄上』。周家の宝さ。斬れ味は極上級なのは保証するよ。んで中に宿るのは『四聖』玄武。こいつがまたかわいくて人なつっこいのなんの。 ───それと、何故か札が大量にあんのよ」  そう言って、泰平は懐からこれでもかってくらいの札を出して見せた。 『ヨロシクねぇ~龍二ぃ~』  玄上から聞こえてきた声はなんともまぁ可愛いもので心が何故かキュンとなった。 「・・・・・・札、ねぇ」  泰平の母方は高名な陰陽師一族らしくその力は天下一品である。その影響か、彼も幼少から習っていた、元々才能があったのか力は家系一・二を争う力で時折そういった関係のの仕事にしばしば行っているのを彼らは知っている。 「さて、私のは・・・・・・・・・」 「ちょっと待て。何でお前だけ日本刀二本なんだよ?この流れだったら普通剣だろ!」 と龍二のツッコミが炸裂するが 「・・・・・・そんなこと、私が知るわけないでしょう?」 と恐ろしい顔で睨みつけたので怖じ気づき、すぐに謝った。 「私のは日本刀二本ですね。右手の方は銘を『長光』と言いまして、その昔、さる高貴な方から私の先祖がもらったそうですよ。こちらは銘を『宗兼』。こっちは代々父方の宝とされています。それで、この宗兼の方に『四聖』白虎が宿っていますね」 『・・・・・・よろしく頼む』 『はっはっは。相変わらず口数が少ないのぅ』  青龍が龍爪の中で笑うが龍二はたまらず訊いてみた。 「あの・・・・・・白虎、さん?何で刀に?確か、劉家には確か『虎狼鉄』があったはずでは・・・・・・・・・」  安徳の家には家宝が二つある。『長光』『宗兼』は父方の宝、『虎狼鉄』は母方、劉家の宝である。どちらも二対(につい)一体の、二刀流のものである。  白虎の返答は彼の問いに答えうるものではなかった。 『さあ・・・・・・俺にも分からん』  自分から聞いといて龍二は気まずくなってしまった。 「ふふふ・・・・・・ククク」  突然、安徳の不気味な笑いが聞こえてきたので、三人は不思議と嫌な予感しかしなかった。
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