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一体どのくらいの距離を歩いて来たのだろうか、一行は疲れきっていて、顔も土色にまみれていた。着ていた服もあちこちに泥まみれになり所々が刃物のようなもので切られたように裂かれていた。。
というのも、当面の目標として町を探して一休みすることになったのだが、行くとこ行くとこ『黄巾党』なる全身黄色の服を着て、頭に黄色のハチマキのようなものを巻いた集団に遭遇してしまい、
「貴様ら、金目のものとその武器をおいていけ」
と言われ、こちらが断ると問答無用で襲いかかってきたからなのだ。
初めのうちは、いい獲物(カモ)がいたと安徳は大喜び───あくまで安徳の感覚であって、龍二ら三人から見れば、それは悪魔が生贄を見つけた形相に似ていた───で進んで狩りを行っていた。龍二らは取り敢えず練習相手が見つかった、ということで青龍らのテレパシーの下彼ら『四聖』の能力を使えるようになる練習をすることにした。
人を殺した感覚を決して忘れてはならぬぞ、と初めてのそれを終えて喘いでいた龍二らに青龍がそう言った。龍二は思わず吐きそうになったが、なんとか堪えた。
数をこなしていく内にこうした戦いに挑んでいった昔の武士や兵士の気持ちが分かったような気がしたし、『四聖』の能力もコツをつかみ始めてきた。ところが、ひっきりなしに、それもアリの大群のようにうじゃうじゃと出現してくる黄巾党がだんだんと煩わしくなってきて、途中から青龍や白虎達にも協力してもらって撃退してきたが、それも限界だった。龍二達や『四聖』のストレスは今や爆発寸前にまで膨れ上がっていた。
その中でふと考えたことは、黄巾党がいるということは、ここは三國志の世界なのだろうか。しかし青龍らが言うことには、ここは龍二達の世界とは違う世界らしい。
しかし、そんなことを考えているところにまた例によって黄巾党の団体様ご一行がいらっしゃったのを見た瞬間、龍二達のストレスはとうとう火山の噴火の如く大爆発を起こしてしまった。
「おいガキ共。金目のものとその武器をおいていけ」
定番の言葉を浴びせる馬毛(ばもう)率いる黄巾党は囲みながら、自分達に眼をつけられた憐れな獲物を気色の悪い笑みを浮かべながら眺めていた。こと、美少女の部類に属する達子を見た彼らは、邪(よこしま)な眼で彼女を見ていた。彼女だけを生け捕りにして後で慰み物にしようという魂胆は見え見えである。
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