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四人の目が大きく見開いた。何故この男は自分達の本姓を知っているのか?安徳の言う通り、この世界の人間ではないように思えてきて気味が悪かった。
「驚く事はないでしょう。趙龍二(ヂャオ・ロンェ゛ァー)君、周泰平(ヂョウ・タイピン)君、司馬達子(スーマー・ダーズー)君。私は君達のことなら全て知っているからね」
悪寒が走った龍二は男に殴りかかったが、拳が触れた感触はなかった。既に男はそこにいなかったのだ。どこだと探しているとその男は龍爪の近くにいた。
「へぇ、まだ新品同様の輝きを放つか。うれしいね」
などと呟いてからいかんいかんと首を振り
「こんなことをしている暇はないからね。ちょっと荒いけど急がせてもらうよ」
四人には男が言ってる意味が理解できなかった。一体何を急いでいるのだろうか。
「破っ」
男が手を水平に切って叫ぶと、突然床に大穴が開いた。ここは二階なのにだとかこの下はどこに繋がっているのだとか諸々を考える暇も無く、四人はその穴から真っ逆さまに落ちていってしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────」
四人の絶叫が空しく穴の中で響き、やがて消えた。
「全く、随分と手荒いやり方じゃな。白朱(はくす)」
穴の上に浮いている男に、いつの間にか現れた、彼と同様に浮いている男女四人組の中で、青髪・青眼で青き鎧を身につけた男が。
「こうでもしないと時間が勿体なくってね」
男―――白朱は悪びれる様子もなく平然と言ってのけた。
「ふん、また面倒なことでもしでかしたんじゃろ?お主がこうするってことは」
「え~。またなの~?」
小柄で緑眼の少年が不満そうに頬を膨らませる。
「今に始まったことじゃないでしょうに」
少年を朱髪・赤服の女がたしなめた。
「では皆さん。彼らのこと、頼んだよ」
「言われなくとも分かっている。
───ちゃんとあれは送ってあるんだろうな?」
白髪で薄黄色眼の男が言うと
「当然」
と白朱が言うと男女はふっとその場から消えてしまった。
「───さて、私も戻るとするか」
独り言を言い男もその場から消えてしまった。
さきほどの大穴はきれいさっぱり消え失せていた。
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