第一章

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少し困っている俺をカイルは一瞬横目に見て、すぐにルーティに向き直り、肩をさすった。 「ルーティ…仕方ない。今日は帰ろう。」 そう言ってもルーティは首を横に振る。 「ルーティ…!ジュースだってもらったじゃないか、ほら、いこうぜ。な?」 カイルが連れて帰ろうとルーティの手を引っ張った。 しかしルーティは頑なに動こうとしなかった。 ルーティが動こうとしない理由 それは2人の顔のアザが物語っていた。 「虐待…か?」 俺がそういうと、カイルの顔色が変わった。 「いいんだ、ホーク。気にしないでくれ。」 カイルはそういうとひと呼吸おいて 「たしかに、虐待は受けてるけどさ、それに同情とか…あんまりいらねえんだ。」 「…」 俺は困った。なんせ仕事や普段のことでいっぱいいっぱいだったから、コミュニケーションといったものがうまくとれず 言葉があたまにすぐ浮かばない。 「なんでおっちゃんが言葉に困ってんだよ。おかしいなあ。あはは」 「ホークだ。ちゃんと呼べ。あと…」 俺がそう言いかけると、突然大きな声が聞こえた。 「カイル!!!どこだ!洗濯しろっていったろ!」 廊下に響き渡る怒号。 直感でわかる。 カイルの父親だ。 硬直する。2人。俺は少し困った。 それに、今ので心底びびったのか、カイルとルーティは何も言わずゆっくりと部屋を出た。 「センキュ。ホーク。」 そう言って家に戻る彼らを、ドアの小窓から少し見ていると、顔に二発。腹に一発。殴る父と殴られるカイルが見えた。 助ける。 そんな選択肢が俺の頭には浮かばなかった。 俺は部屋に戻り、もう一杯オレンジジュースを飲んだ。
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