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少し困っている俺をカイルは一瞬横目に見て、すぐにルーティに向き直り、肩をさすった。
「ルーティ…仕方ない。今日は帰ろう。」
そう言ってもルーティは首を横に振る。
「ルーティ…!ジュースだってもらったじゃないか、ほら、いこうぜ。な?」
カイルが連れて帰ろうとルーティの手を引っ張った。
しかしルーティは頑なに動こうとしなかった。
ルーティが動こうとしない理由
それは2人の顔のアザが物語っていた。
「虐待…か?」
俺がそういうと、カイルの顔色が変わった。
「いいんだ、ホーク。気にしないでくれ。」
カイルはそういうとひと呼吸おいて
「たしかに、虐待は受けてるけどさ、それに同情とか…あんまりいらねえんだ。」
「…」
俺は困った。なんせ仕事や普段のことでいっぱいいっぱいだったから、コミュニケーションといったものがうまくとれず
言葉があたまにすぐ浮かばない。
「なんでおっちゃんが言葉に困ってんだよ。おかしいなあ。あはは」
「ホークだ。ちゃんと呼べ。あと…」
俺がそう言いかけると、突然大きな声が聞こえた。
「カイル!!!どこだ!洗濯しろっていったろ!」
廊下に響き渡る怒号。
直感でわかる。
カイルの父親だ。
硬直する。2人。俺は少し困った。
それに、今ので心底びびったのか、カイルとルーティは何も言わずゆっくりと部屋を出た。
「センキュ。ホーク。」
そう言って家に戻る彼らを、ドアの小窓から少し見ていると、顔に二発。腹に一発。殴る父と殴られるカイルが見えた。
助ける。
そんな選択肢が俺の頭には浮かばなかった。
俺は部屋に戻り、もう一杯オレンジジュースを飲んだ。
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