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彼の絵に魅了された俺は
「描いて見るか?」
そう言った彼に一も二もなく頷いた。
本来彼は弟子を取らない。
それなのに丁寧に手解きしてくれた。
当時は弟子という括りには当て填まらなかったと思う。
遊びの延長
ただの戯れ。
子供の手習い。
けれどその俺の手習い程度の絵に鳴海達彦は興味を持って見ていた。
しかし、俺は鳴海との関係を終わらせた。
関係を終らせようと話しをする俺に二人の間にそういった関係が無くなろうと筆は折るなと熱く説いた。
師弟という繋がりに様変りして交流は続く。
「深雪の絵を見ていると快楽に溺れて行くようだ」
彼は俺の絵を見てよくそう言って目を細めていた。
誉めているんだか何なんだか…。
今にして思えば、彼は絵を透して俺を抱いていたのかもしれない。
推測だけれど。
彼の本意は分からない。
俺は俺であって鳴海達彦ではないから。
俺は将太郎ただ一人を一途に想い続けてきた、それは何があろうと揺らぐことはない。
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