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大阪へ行く数日前、母の病が発覚した。
手術をすれば大丈夫という。
俺は大阪へ行くのを止めた。
姉の楓は大学時代から付き合っていた男と結婚して今や二児の母だ。
まだまだ手の掛かる子供を抱えて父や母の世話を任せるのは心苦しい。
それに数々の心配を掛けてきた俺ができる親孝行だと思ったからだ。
将太郎もその方がいいと言ってくれた。
新幹線ならあっという間だと言って、事実出来うる限り週末毎に将太郎は帰って来た。
あっという間に一年が過ぎた。
そして今日、俺は大阪へ行く。
そんな日だというのに何で滅入る夢なんか見るかなぁ…。
付き合い出して十年、たった一年離れていただけで不安になってどうする。
俺が絵を職とすると決めた時、将太郎は俺を信じてくれたというのに。
俺が信じなくてどうする。
将太郎を想って三十年が経つ。
赤ん坊の頃から俺は将太郎に恋してきたんだ。
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