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ババァが死んでも悲しむことなどない俺が、気になって仕方ないのは遺産だ。
広大な土地を所有していることを知っていた。血が繋がっているのは俺だけ。
薄いかもしれないが、そんなもん法律には関係ない。
葬式が終わり、落ち着いた頃、弁護士がやってきた。
相続の話だ。
――これだ!
『――春になれば、
きっとわがるべ』
余命短いババァは、このことを言っていたんだ。
今は夏だがどうでもいい。俺の気分は春爛漫(はるらんまん)だ。
弁護士から渡された遺言状をドキドキしながら開封した。
目に写ったのはババァの汚い字。
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和陽へ
遺産の件だが、
オメーにはやらん。
残念だったな。
持ってる土地は、死ぬ前に全部売っちまったからねーぞ。
できた金は弁護士の先生に頼んで、障害者の団体に寄附しちまったしな。
そんなことより早く、こっちきてまた手伝いしろ。
ババより
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最後の最後まで憎たらしいクソババァだ。
だが、憎たらしい孫だったのは俺だった。
クソ馬鹿だったのも、俺だ。
俺だったんだ……。
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