俺のクソババァ

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ババァが死んでも悲しむことなどない俺が、気になって仕方ないのは遺産だ。 広大な土地を所有していることを知っていた。血が繋がっているのは俺だけ。 薄いかもしれないが、そんなもん法律には関係ない。 葬式が終わり、落ち着いた頃、弁護士がやってきた。 相続の話だ。 ――これだ!  『――春になれば、       きっとわがるべ』 余命短いババァは、このことを言っていたんだ。 今は夏だがどうでもいい。俺の気分は春爛漫(はるらんまん)だ。 弁護士から渡された遺言状をドキドキしながら開封した。 目に写ったのはババァの汚い字。 =============== 和陽へ 遺産の件だが、 オメーにはやらん。 残念だったな。 持ってる土地は、死ぬ前に全部売っちまったからねーぞ。 できた金は弁護士の先生に頼んで、障害者の団体に寄附しちまったしな。 そんなことより早く、こっちきてまた手伝いしろ。            ババより =============== 最後の最後まで憎たらしいクソババァだ。 だが、憎たらしい孫だったのは俺だった。 クソ馬鹿だったのも、俺だ。 俺だったんだ……。
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