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ババァ……ツンデレかよ。
俺は今どんな顔をしているんだ?
きっと、笑っているような、泣いているような、変な顔に違いない。
でも、相変わらずだなババァ。
天国……いや、地獄かもしれねーけど元気でやれよ。
それと、
――――ありがとうな。
『いい、おばあちゃんじゃない』
「――!? お、お前、いつからそこにっ!」
『変な顔して泣き出した辺り?』
照れ臭い俺は、泣き顔を隠すよう仏壇に視線を移し、位牌に話しかけた。
なぁ、バァちゃん。彼女に一回会ったことあるだろ? 結婚して、夏には子供も生まれるんだ。
「そうだ。子供の名前って俺が決めてもいいか?」
『いいけど、どうしたの急に?』
実はもう、俺は名前を決めていた。
「"春道"ってのはどうかな?」
『春? この子が生まれるのは夏だよ。
……でも、いい名前ね。』
「だろ? きっと元気に育つぜ!」
ババァみたいにな。
『どうして、春道にしたの?』
「それは……」
『それは?』
「春になったら、
きっと分がるべ!」
俺はババァと同じ口調で答えた。
"いつか"分かる日がやって来る。だから、希望を持って生きろ!
ババァは、そう言いたかったんじゃないか。
深い意味は無いのかもしれない、単にババァの口癖なのかもしれない。
でも、俺はそう理解している。
だって、その言葉にクソ馬鹿だった孫は、希望を見いだせたんだから。
『ちょっと、何よそれ?』
意味が分からない彼女は、訝(いぶか)しげにこっちを向いた。
俺は、無言で微笑んだんだ。
――そうだろ? バァちゃん。
『俺のクソババァ』
Lento.
Fin.
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