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『――春になれば、
きっとわがるべ』
ババァの口癖だ。
――全然、わかんねーよっ!
俺は、中学二年の時に交通事故にあった。
突っ込んできた大型トレーラーとぶつかり、前に座っていた両親は死亡。後部座席に座っていた俺の命だけは助かった。
右腕と引き換えに。
診断名は"右正中神経及び右尺骨神経断裂"らしい。
そんなこと中学生に言われたって、さっぱり分からない。
理解できるのは、右の肘から下の感覚がほとんどなく、親指と人差し指以外は動かないことだけ。
入院してあれから半年。
リハビリを続けていたが、これ以上の回復は望めないと退院させられることになった。
時が経ったからなのか、元来の前向きな性格からなのか分からないが、俺は両親の死を乗り越えた。
――たぶん。
そんな俺がいく所は、一つしかなかった。
父親方の祖母。ど田舎に住んでいて、小さい頃、決まって夏休みになると遊びに行った記憶がある。
すんげー怖いババァがいるんだ。
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