84人が本棚に入れています
本棚に追加
「水持ってきたよっ!」
家の外から叫ぶと、ちゃんと聞こえたらしくババァの声が。
『台所までもっでこいっ!』
どんだけ孫使いが粗いんだ。
二つに入っていた水を一つにまとめ台所へ持っていくと、そこには目を疑う信じられない光景が広がっていた。
蛇口から出る水で野菜を洗うババァの姿が……。
「ちょ、ちょっと、バァちゃん! 水道あるじゃんかよ」
『あたりめーだ。今時水道がない家なんかあるのか?』
やっぱり歳だからボケたのか。
いや、ババァに限ってそんなことがあるわけない。
「だったら、なんで井戸の水を俺に……」
『汁ものには、井戸の水が美味いんだ。水道水なんか使えるか』
この日から、朝晩の水汲みが俺の日課となった。
絶対おかしい。俺はほんの一ヶ月前に事故で両親を亡くしたんだぞ。
『ほらっ! ボサッとしてねーで。水が足んねーべさ!』
朝四時半に起床し、水汲みと畑仕事。それから一時間半かけて山を越え学校へ。
帰ってきたら、また水汲みをして、掃除と夕飯の支度。極めつけに、風呂上がりのババァをマッサージする。
こんな地獄のような毎日が始まった。
最初のコメントを投稿しよう!