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高校にあがった頃には基本業務に料理が加わった。
動かない右手で包丁を持つのは至難の技。だから利き手を交換し、左手で包丁が使えるよう練習せざるを得ない。
それでも、ババァはプロの料理人なみの腕だったので、大変だったがこの時間だけは唯一楽しかった。
――この時間だけはね。
水汲み、畑仕事、掃除、洗濯、御飯の仕度、ババァのマッサージ。
バイトだったら月いくら貰えているんだって話だ。
ただ、どこにも行くあての無い俺は、黙ってババァに従うしかなかった。
そんな生活を過ごしながら、三回目の春を迎える。
もちろん、何度、春を迎えても何も分からなかったが……。
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