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そんな無言の中、信長がびしょびょの俺に気付いて手拭いを投げて寄越した。
「お蘭だろう?
起きないようなら水でもぶっかけろと言ったからな。
本当にやるあたり素直な奴よ」
とカラカラと笑う。
お前のせいか!
文句の一つも言ってやりたかったが、土方は出かけた言葉を何とか飲み込んで眉間に山谷を作るに留めた。
しかし、拭こうとした手拭いを見て、わなわなと震える手。
「てめえ…」
低く重い声が出る。
土方は、手拭いを畳に投げつけ、信長を睨んだ。
「下帯じゃねえかよ!」
そう、優しさかと思われた手拭いは土方が先日から望んでいた褌だったのだ。
「わっはっはっ欲しかっただろう?」
確かに下帯は欲しかった。
出来るなら、もっと前に。
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