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「………お前は俺のいた時代がどんなもんか、一度も聞いてこなかったな」
そう言うと、土方は左に置かれた刀にふと目をやる。
信長が目指す『戦がない世』には必要のないもの。
信長が土方が時を遡ってやってきたことを信じているならば、それは信長が目指す世にはなっていないことの何よりの証だった。
その証を手に、土方は信長の眼前に拳を突き出した。
「俺がお前と共に生きてやる」
戦ってやる。
信長が死なないように。
信長が目指す戦のない世にするために。
今己の持つ全てを賭けて。
嘘偽りのない土方の目は、初めて会った頃と違い、 ギラギラと生に満ち満ちていて。
眼前の拳に己の手を重ね、信長はニヤリと笑った。
「後悔するがいい」
その言葉に土方も笑う。
そんな二人の姿は、鏡を見てるかのようによく似ていた…。
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