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どんなに綺麗事を並べても、やった事実は変わらない。
今の世を変えるために誰しもを従える絶対的恐怖を信長は選んだのだ。
法度を作り上げ、隊士たちを抑えつけた自分と変わらない。
土方は山南の悲しげに笑う姿を思い浮かべて、自嘲するように笑った。
「ところで、今日あいつは?」
「お館様は宴の席にある。
武田征圧に功を成した三河様(家康のこと)や他の武将たちを呼んだ盛大な宴だ。
私も今から行くことになっている」
「そうか…毎日すまねぇな。
俺の方は大丈夫だから早く行ってこいよ」
「………共に参るか?」
「え?」
「お前が来たいならば連れて来ても良いと仰っていた」
「なら頼む」
「分かった。支度を用意しよう」
迷うことなく答えた土方に、満足げに頷いた蘭丸は足早に部屋を出て行った。
ここ数日共にいたこともあり、蘭丸の中で土方に対する敵対心は大分薄れたようだった。
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