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―――最悪だ…。
最初に思ったのはそれだった。
戦勝の気分に和やかに、かつ盛り上がっていた場の空気は、一瞬にして消え去っていた。
耳に聞こえてくるのは、したたかに打ちつけられる音。
繰り返されるそれに土方は我を取り戻してその手を掴んだ。
掴んだのはわずかばかり震える蘭丸の扇子を持った腕。
その瞬間、場にある全ての視線が自分に注がれたのがわかった。
と同時に、射抜くような視線も土方を襲う。
ぞくりと肌が粟立つほどの怒りを孕んだその視線の主は、怒りを抑え込んだような静かな声を発した。
「何のつもりだ?」
「見るに耐えねえ。餓鬼か、お前は」
その物言いに、誰しもが息を飲む。
怒れる信長が何をするか目に見えていたからだ。
新たに名乗り出た犠牲者に、憐れみと恐怖の入り混じった嫌な空気が淀んだ。
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