鬼が戦った日

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「餓鬼だと?」 「ああ」 「何をしてそう思う」 「本気でそう言ってんなら救いようのねえ馬鹿だな」 「言葉は選んだ方が賢いぞ、歳?」 「はっ今更だな」 鼻で笑う土方を、じとりと睨みつける信長。 しばし無言のまま交差する視線。 その場の誰もが土方の命を惜しんだその時、信長は持っていた盃を投げた。 避ける素振りも見せずに、盃を額で受け止める土方。 したたかに土方の額を打ちつけた盃が、力を無くして畳に転がる。 「興醒めだ。好きにしろ」 言い残すと、信長は立ち上がり、大股で宴の場からいなくなる。 「あ…」 「いい、俺が行く」 追いかけようとした蘭丸を止めて、土方は額にわずかについた酒を拭うと、その後を追った。
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