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「明智殿…」
「家康殿、お心遣い傷み入りまする。
場を乱した拙者はここで下がります故、どうかそのまま…」
「…余計な真似を致しました」
「とんでもございませぬ。
拙者が至らぬ故に皆々様にはつまらぬ思いをさせまして申し訳ござらん。
またまだ酒も用意しておりますれば、どうぞお楽しみ下され」
顔を上げて武将たちにそうにこやかに告げる光秀の額は、打ちつけられた痕が残っている。
光秀は未だに立ち尽くす蘭丸の肩を優しく叩くと、後を頼み静かに出て行った…。
出て行く時、家康は光秀の表情にぞくりと肌を粟立たせた。
にこやかな笑顔とは一転。
温和な彼らしからぬ鬼のような形相の光秀を見てしまったのだ。
―――何事もなければ良いが…。
家康は一人そう心中で願い、光秀の言葉通り酒宴を再開すべく席にと戻るのであった…―――。
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