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「ぜぇっ…ぜぇっ…
やっと捕まえたぜ…信長ぁ…っ」
肩で息をしながら土方は信長の襟を逃すものかと掴んだ。
襟首を掴まれた信長はなんら慌てることなくニヤニヤと笑っている。
二人共に宴の席でのことを忘れているようだ。
宴で蘭丸がどんな思いをしているかも知らずに…。
信長が最後の逃げ場に選んだのは城の裏手にある蔵だった。
格子から彼の髷を発見した土方は格子からにゅっと手を差し入れたのだ。
間もなく夜になろうとしている逢魔が時…。
ザワザワと木々が揺らめき、嫌に生暖かい風が土方の頬を撫でる。
土方は流れる汗をぐいと拭い、信長にそこを動くなと何度も念押ししながら蔵の中に入った。
蔵の中は意外にも涼しく、蔵独特のカビ臭い匂いもない。
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