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ニヤリと笑った信長に対し、みるみるうちに土方の顔が朱に染まる。
その都度感じた情緒を自分なりに思いのまま書き綴った我が子のような句作たちを馬鹿にされるのだけは許せない。
朱に染まったのは恥ずかしさでなく、怒り。
土方はギロリと睨みつけると、信長の手から帳面を奪い取った。
「馬鹿にすんな」
「馬鹿になどしておらん。
捻りがないのはそれはそれで味がある。
やたらと濁している句よりも素直で惹かれる…俺は嫌いじゃないぞ」
今度は照れに染まった。
第一これは趣味であって、元来誰かに見せる為のものではない。
書き留め、見返した時にその時の自分を思い出す。
忘れたくない時を綴ったものなのだ。
信長独特の言い回し、裏を読めば誉め言葉。
似たもの同士の彼の気持ちは嫌になるほど良くわかり、それ故に恥ずかしく、嬉しかった。
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