鬼が戦った日

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信長は伝令の内容がわかっているのか口角をわずかに上げた。 しかし目は笑っていない。 土方にとっての浅葱色の羽織りと同じ役割の外套をバサリと羽織ると、大股で蔵を出て行った。 取り残された土方はいまだに張り詰めた空気を紐解くように息をつくと、ニヤリと笑った。 俺は俺が出来る事をやるか…。 その笑い方は先の信長と同じもの。 土方が出て行き、閉ざされた蔵の調度品だけがそれを知っていた―――。
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