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「お見苦しいものをお見せしてしまいましたな」
「…何があったか伺っても?」
「なに、たいしたことではありませぬ」
「そうですか…」
「あ、私は近々此処を離れることになるやもしれません」
「急に何故?」
「失態を犯してしまった私を信長様は許しますまい。
それに、武田家を征したとて、いまだ戦は続いている…近く命が下ると思います」
「出陣前にまた手合わせをお願いしたいですな」
「土方殿から言っていただけるとは!
是非とも!」
「居候の身ゆえ、いつでも声をかけてください」
「はは、わかり申した。それでは私はこれで。
―――蘭丸、気にすることはありませんよ」
目を合わせられずにいた蘭丸の肩を優しく叩き、光秀は去って行く。
その後ろ姿を、土方は眉を寄せて険しい表情で見送るのだった。
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