鬼が戦った日

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つまりは…光秀は間者を忍ばせているっつうことか? だがそうだとしても早すぎる。 あの部屋には他にも人がいたはずだ。 …あそこに入るのに何の違和感もなく行ける奴がいるとは思えねえ。 間者でもねえとなると… だとすればどうやって明智殿はその情報を得たんだ? 考えに考えが交錯する中、いつの間にか不機嫌になっている信長に気付く。 土方は残りの茶を飲み干すと、無言で立ち上がった。 「どこへ行く?」 「ちょっと野暮用を思い出してな」 「光秀のところか?」 「…ふ、それを聞くのは野暮ってもんだろ」 男でもドキリとする程の妖艶な笑みを見せて、土方は部屋を後にする。 土方の部屋に一人残された信長は、苛立ちに湯のみを投げると、ごろんと大の字に転がった。 「―――輪廻転生、か」 その言葉の真意を、今は誰も知らない―――。
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