鬼が嘆いた日

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部屋を後にした土方は、唯一の癒やしである月姫の下へ向かっていた。 全てを包み込んでくれるような月姫の笑顔を目に焼き付けておきたかったからだ。 襖の前までやってくると、どう声をかけたらいいものか、としばし逡巡する。 そうしているうちにそんな自分が恥ずかしくなって、土方は意を決して咳払いした。 「歳?」 部屋の中から聞こえてきた声に無意識に頬が緩む。 なんだかんだと忙しく、顔を見るのは久しぶりだった。 咳払いしただけで自分だと思ったその事だけでも嬉しい。 土方はニヤニヤしそうな顔を引き締めながら部屋に足を踏み入れた。 「何だか久しぶり」 「―――あぁ。 いろいろ頭に入れとかなきゃいけねぇことが多くてな」 「肩揉む?」 「は?い、いやっだ、大丈夫だ」 「遠慮しなくてもいいよ。 こうみえても私上手なのよ? ほら、早く座って」
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