鬼が嘆いた日

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約束はしないと決めていた。 果たせない約束ほど相手を縛り付けるものはないから。 ―――必ず戻る。 言おうとした口は空気だけを漏らす。 それが言えない自分が滑稽に見えて、土方は月姫の頬に手をやる。 「忘れていいのはお前だ、月姫」 「…え?」 「俺のことは忘れていいから」 そう言って、土方は力強く月姫を抱きしめた。 ―――今、ここにある確かな現実を、決して忘れないように。 月姫は何も言わず、土方の肩に顔を埋める。 己が先に発した言葉ゆえに、何の言葉も返すことなど出来なかったのだ。 いっそ突き放された方が楽だと思っていた自分が馬鹿だった。 突き放されたって、愛しいことに変わりはないし、まして忘れることなど出来ないのだから…。 月姫は繋がりを確かに感じられるこのぬくもりを、体に染み込ませる。 それは土方がここに生きているという紛れもない事実を、月姫だけが残せるものだった―――。
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