鬼が嘆いた日

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そんな土方の様子を見て、また信長が笑えば、周囲を囲むように歩いていた家来たちも堪えきれず吹き出した。 本当に平和だった。 彼等が纏う鎧や武器を見なければ。 5月29日。 月姫に別れを告げて戦へと城を出てから数日。 信長が最期を迎える地―本能寺はもう目の前である。 侵入者を拒むように設けられた外堀は、空の青さを写してキラキラと輝いていた。 そこを悠々と入っていく信長一行の数およそ五百名。 信長の息子、信忠の姿もある。 「今更だけどよ…本当にここに逗留すんのか?」 ここが最期の地だと記憶していた土方は再三に渡り違う場所にしようと進言していた。 だが、土方の考えをよそに、信長は考えを改める事はなく、本能寺に決定してしまう。 どこにせよ、信長が単騎で極秘に行動しない限りどこからか情報は漏れるには違いなかったから、最終的には土方も納得したのだが…。
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