鬼が嘆いた日

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5月31日。 昨日の太陽は厚い雲に覆われ、どんよりとした曇り空が広がる。 じめじめとした生温かい空気がべたつくようだった。 何年経っても変わらねぇんだな…。 首に張り付く髪を結いあげながら、土方は身なりを整える。 いやに湿気った空気は、間もなく雨が降ることを予感させた。 「こりゃ一雨くるな…」 誰にともなしに呟き、土方は信長の元へ向かう。 畏れ多くも信長は帝が泊まる寝殿に寝てるらしい。 土方がいる本殿からは少し離れていたため、面倒くせぇと欠伸をしていると、見慣れた黒い影を庭に見つけた。 「弥助!」 「土方、オハヨウ」 「何してんだ?」 弥助の手元を覗き込むと、紙だった。 察した土方はため息をついて腕を組む。 「―――朝廷からか」
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