鬼が嘆いた日

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6月1日―――夜。 刻々とその時は迫っていた。 それを知る唯一の男は、碁に興じる男の傍らで目を閉じてある夜の事を思い出していた。 ………目に決意を灯した男のことを。 『今ならまだ間に合うのでは?』 そう問いかけた土方は、行く手を阻むように光秀の前に立った。 困ったように笑って、光秀は土方から目を逸らす。 そんな二人を帰蝶は首を傾げて見つめていた。 『姫…もうお戻り下さい。 あまり無体をしてはいけませんよ』 『私は聞いてはいけないの?』 『野暮な事を申されますな。 さ…おやすみなさいませ』 『………おやすみなさい』 優しい笑顔はいつものままなのに、やんわりとしたその言葉は確かに自分を拒んでいて…帰蝶は仕方なくその場を後にする。 視線だけでそれを見送ると、土方は無粋な真似をしたことをまず詫びた。
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