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『勘違いしておられますな。
私と奥方様との間に特別なものはありませぬ』
『そうですか…』
何と切り出したらいいものかと考えあぐねていると、光秀はふぅ、と息と共に夜空を見上げた。
『私には私の理由があります』
そう言うと、今度は真っ直ぐに土方を見据えた。
そこに写るのは揺るぎない決意だった。
『何故ですか?!
何故…あなたも天下がお望みか!?』
『天下?天下など私に興味はない。
やるべきと思うから逃げない。それだけです。
私は………武士ですから』
『………明智どの』
『私の心は私だけがわかっていればいいのです。
他の誰が異を唱えようと、ね』
もう何を言っても、決して光秀には響かない。
山南と同じその目は、土方に次の言葉をなくさせた。
また同じことを繰り返すのか?
自問自答している間に、光秀は土方に背を向け、歩き出している。
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