鬼が嘆いた日

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「長生きしてぇならその方が賢明だぜ? ここを墓場にしたいっつぅなら止めねえけどな」 土方の目に、坊主は臆した。 ぶるりと肩を震わせて、両手を合わせる。 「御仏の加護がありますよう…」 「ありゃぁ…いいがな」 祈りを捧げると、坊主は足早に寺を後にする。 やけに生温かい風が頬を撫で、立ち止まると、今は影にしか見えぬ寺を振り返った。 「杞憂であれば良いが…」 しん…と静まり返った寺に、坊主はもう一度両手を合わすと、闇の中に溶けていった…。
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