鬼が嘆いた日

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3)) 「起きてるか?」 そう声音を抑えて問えば、ゆらりと影が動く。 土方は返事も聞かぬままゆったりとした動きで部屋に入った。 「何だ歳、夜這いか?」 窓際に片膝を立て座る信長はニヤリと笑う。 土方の面持ちは崩れない。 例え信長が拒んでも己の知る全てを語る為に来たのだ。 そうでなくては救えない。 そんな決意を秘めた土方に信長の戯れ言に応える余裕はなかった。 全ては信長を生かしたいが為…。 ぎりっと拳に力を込めると、土方は信長の前に正座した。 「―――つまらんな。 まぁ良い、聞いてやる。 今の貴様の目は嫌いじゃない」 「真面目に聞いてくれ」 一切の無駄な台詞を口にしない土方に、信長はため息をついて笑みを引っ込めると先を促した。
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