鬼が嘆いた日

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「単刀直入に言う。 ―――お前に天下は取れない」 信長の表情は変わらない。 眉一つ動かすことなく、信長はただ土方を見据えていた。 その場の空気が張り詰め、息苦しささえ感じる。 月明かりを背にした信長。 月明かりに照らされる土方。 互いに決して逸らさない視線の先には、やはり互いが写っていた。 「明智光秀は反旗を翻し、此方へやってくるだろう。 そしてこの少ない人数では勝てやしない。 この寺もろとも火にのまれて織田信長は自害した。 ………それが本能寺の変。 これが俺が知っている『歴史』だ」 「………そうか」 「明智光秀が反旗を翻した理由は諸説ある。 どれが正しいのかはわからん。 安土城を去るその夜、最後に会った光秀に探りを入れてみたがわからなかった」
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