鬼が嘆いた日

25/39

418人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
思わず立ち上がった土方を制し、信長は窓の外に目を見やる。 「確かに…急がねばならんようだ」 そう言うが早いか、信長は土方を押しのけて勢い良く障子を開け放つ。 「誰ぞ!誰ぞおらんか!」 夜半の信長の呼びつけに、一番最初に来たのは弥助だった。 ようやく逃げる気になったかと安心した土方だったが、その安堵はすぐに破られる。 「弥助!女たちを全員集め、東へ向かえ!」 「ヒガシ?」 「日が昇る方だ! 行けばわかる!貴様はそのまま戻って来るな!」 「チョッ―「いいから早くせい!」 意味もわからず混乱する弥助を一喝し、信長は蹴りと共に弥助を送り出す。 土方はまさか!と信長が覗いていた窓の外に目をやった。 暗い闇に見えるはいくつかの炎。 それが誰のものか―――考えるまでもない。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加