鬼が嘆いた日

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急いで御殿に足を向ける信長に、諦めた感じはない。 その証拠に的確に命令を飛ばし、少ない人数でありながら戦闘態勢を整えていく。 そんな信長の妨げにならないよう、土方も動く。 「火矢に注意しろ!! 敵の多さに臆するな!!てめぇらには魔王がついてんだからな!」 「はっはっはっついでに小鬼もいるがな!」 「小鬼っつぅな馬鹿やろう!」 こんな時でも変わらない信長に、土方は苦笑しながらも己も刀を振るう。 明らかに旗色が悪いのはわかっていたが、だからといって屈することなど出来はしない。 敵に背を向けるのは、武士の恥だと。 あちこちから焦げ臭い匂いと煙が漂ってくる。 やはり火をかけられたようだ。 退路を断たれるのだけは避けたい。 そう思い、信長を見れば、 「くくくっあーはっはっはっこの俺に喧嘩を売るうつけがいたとはなぁ!」 的確に鎧の隙間を槍で刺し、返り血を浴びながら笑っていた。
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