鬼が嘆いた日

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ニヤリとわらって返り血にまみれた顔を向ける。 「ったりめぇだ! 俺を誰だと思ってんだ、信長!」 「くくくっ全く、貴様は本当に飽きん奴だ! ―――さて、ここは一旦下がるぞ! 貴様には言いたい事がある!」 「ばっ…何考えてんだ! 中は火が来てんだろうが!」 「だからこそ、だ。 わざわざ死に行くようなものだからな、追う阿呆もおらん!」 ―――成る程、と土方は頷き、いつの間にか燃え広がっている寺に飛び込んだ。 それを見送り、信長は一人奮闘する蘭丸に叫ぶ。 「お蘭!わかっておるな!」 「はっ!」 「―――流石俺の小姓だ」 満足げに微笑むと、蘭丸は目に涙を滲ませた。 「勿体なきお言葉にございまする…!」 しかしそんな余裕など敵はくれない。 数本の矢が降ってきたかと思うと、一瞬にして炎が二人を分かつ。
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