鬼が嘆いた日

32/39

418人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
4)) 気付けば、あたりは火の海だった。 炎は更に大きくなるために燃えていないところを貪欲に探し回る。 そんな中、炎より先に見つけた一室。 四畳半ほどの部屋にたどり着いた土方は肩で息をしながら体を投げ出すように倒れ込んだ。 至る所に火傷が出来て、顔も体も着物もボロボロだったが、命に別状はない。 信長の読み通り、もはや燃えてる場所に死ににくる敵はなく、敵と言えば唯一の炎だけ。 そこをくぐり抜けた土方は、痛みも感じない程高揚した気分だった。 ちらりと目だけを動かし退路を確認する。 雨戸が閉められたその部屋は、やけに静かで、外の炎の叫び声が遠く聞こえた。 雨戸の先にあるのは敵か、火の海か… 土方は隠し通路でもないかと這いずるように起き上がった。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加