鬼が嘆いた日

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休んだせいか、いつの間にか息も整っている。が、代わりにやってきた痛みに顔を歪めた。 「無事でいろよ…っ」 押し出すように呟きながら、探したが、目当ての通路は見つからない。 火が来ない分、熱気の籠もる部屋は蒸し風呂のように熱く、土方の体力を容赦なく奪っていく。 ダラダラと流れる汗を拭って、土方は襖を少し開けてみた。 「………まさに火の海だな」 見た事を後悔したくなる程火に満ちたかつての寺。 あと一間分…その先は火の海。 土方が来た時はまだ通路が見えたが、もはやそこにあるのは火の壁。 その火の壁に、突如黒い塊が見えたかと思うと、それが飛び込んできた。 「どぅわぁっ!?」 ゴロゴロと転がったそれは、火を畳で押しつぶすと、底から響くような笑い声と共に立ち上がった。
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