418人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
休んだせいか、いつの間にか息も整っている。が、代わりにやってきた痛みに顔を歪めた。
「無事でいろよ…っ」
押し出すように呟きながら、探したが、目当ての通路は見つからない。
火が来ない分、熱気の籠もる部屋は蒸し風呂のように熱く、土方の体力を容赦なく奪っていく。
ダラダラと流れる汗を拭って、土方は襖を少し開けてみた。
「………まさに火の海だな」
見た事を後悔したくなる程火に満ちたかつての寺。
あと一間分…その先は火の海。
土方が来た時はまだ通路が見えたが、もはやそこにあるのは火の壁。
その火の壁に、突如黒い塊が見えたかと思うと、それが飛び込んできた。
「どぅわぁっ!?」
ゴロゴロと転がったそれは、火を畳で押しつぶすと、底から響くような笑い声と共に立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!