鬼が嘆いた日

35/39

418人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
「貴様はなかなかに表情に出過ぎだな、歳」 くくくっと何がおかしいのか信長は笑う。 そしておもむろに懐から小太刀を出した。 「…それで自害でもするつもりか」 低い声音で土方が信長を睨みつける。 対する信長は全く意に介することなく鞘を抜き、鈍く光る刃を見せた。 「まぁ見てろ」 ニヤリと笑うと、信長は髷を切り落とす。 いつぞやの落ち武者を思い出す出で立ちだ。 バラバラと落ちた髪をかきあげ、信長は手に持つ髷を投げ捨てた。 「何してんだよ!」 「このまま髷なんぞしてたら俺は蝋燭だろうが。 こんなに火があるのに必要なかろう」
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加