鬼が嘆いた日

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ボロボロになった信長の襟を掴み、土方は叫ぶ。 だが、二人の周囲は確認せずとも火に囲まれていて、最早どこにも逃げ場などなかった。 それを見た信長は、土方の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。 「楽しかったぞ―――歳!」 言うなり信長は土方を雨戸の方に向けて投げ飛ばす。 予想だにしていなかった行為に、土方は目を見開き、手を伸ばす。 届かないとわかっていた。 しかし伸ばさずにはいられない。 遠くなる信長の姿は、バキバキと音を立てて崩れてきた燃えた柱にかき消される。 「信長ぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」 最後に見えた信長は 何の悔いもないように 笑っていた―――――。
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