鬼が――た日

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「歳っい、今伊東参謀が…!………歳?」 尋常でない伊東の様子に近藤が慌てて駆け込んでくる。 その後ろには山南を除いた試衛館来の同志たちの姿もあった。 だが、部屋に入るなり見えた土方の姿に、皆一様に言葉をなくした。 土方は明らかに泣いていたから…―――。 「………歳…」 何と声をかけていいかわからない。 ここは近藤に任せるしかない。 誰よりも厳しくあろうとする男だから…と、仲間たちは静かに去っていく。 近藤はゆっくりと土方に近付き、そっと背中を撫でた。 「………勝ちゃ…」 「馬鹿だなぁ、歳。 そんなに無理する事はないんだぞ? ほら、とにかく着物を着ろ」 泣きぬれた顔を見せたくなくて、土方は俯いたまま出してくれた着物を羽織る。
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