夏部門 ~紗幕の向こうへ~

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「……あのね、私、あなたに言っておきたいことがあるの」 「な、なに?」 少女は突然ヒロの方に向き直り、今までのゆったりした口調とは打って変わって、真剣な語調で言った。 お互いの顔の位置が近く、ヒロは何だか恥ずかしくて、ついわきを向いてしまった。それでも少女は、じっとヒロの顔を見ていた。 しかし、その表情はとても切なく、心を締め付けられる感じがした。 「――――――――私、本当はここにいちゃいけない、あなたとは違う存在なの」 ――――――うん、なんとなく分かってた。 ヒロは声には出さず、心の中でつぶやき、ただ一度、首を縦に振った。 「……驚かないの? 私は……その、幽霊、なのよ?」 「だって、君は……何だか、あったかいんだ。心がポカポカする。なんなんだろうね、これ……」 ヒロは初めて見た時から、どこか懐かしい感じがしていた。その正体は分からないけれど、ヒロにとって、大切な人なのではないか、そう考えていた。 今も隣にいる少女からは優しい光を感じる。とても柔らかくて、暖かくて、まるでお日様のような、包み込むような暖かさ。 「……ありがとう、ヒロ」 少女は呟いた。その瞳から、一粒の涙がこぼれ落ちた。 「どうして僕の名前……」 ヒロは驚き、目を丸くした。その問いに対する答えは全く予想の埒外の答えだった。 「私はユウコ。ヒロの、………………お姉ちゃんだよ」
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