夏部門 ~紗幕の向こうへ~

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「おねえ……ちゃん?」 「うん、そうだよ。私はね、ヒロが生まれてすぐ、事故で死んじゃったの」 「……死んだ?」 「そう。ヒロのこと、ずっとお空から見守ってたよ」 「………………」 ヒロは答えない。 「私はそろそろ、また新しい命をもらうの。だから、もうすぐしたら、ヒロを見守ってあげることができなくなる。だから最後に……こうして会っておきたかった」 「……………………」 ヒロは、答えない。 「泣かないで? ヒロ?」 優しく言うその声が、急に遠くに聞こえた。 ヒロは必死で嗚咽をこらえ、目を強く瞑った。両目からとめどなく、涙が溢れる。 少女はそっとヒロを抱きしめ、その背中を母親が子どもにやるように、ゆっくり撫でてやった。 辺りが一層静まり、静寂に包まれる。 二人だけの空間。 そこに、星の輝きとは異なる光が差した。 「ほら、見てヒロ。……花火だよ」 ヒロは再び空を見上げる。 花火を打ち上げる音が聞こえ、続いて青色の光が差し、再び花火の音。その音が魂を揺さぶり、直接心臓へ響く。
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