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それから三人は屋台を見て回りながら、目に付くものはお小遣いが許す限り食べ、遊んだ。
りんごあめ、射的、金魚すくい、わたあめ、卵せんべいなど、祭りでしかできないことをした。
しかしその間、ヒロはずっと何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回していた。焼きそば屋のところで見かけた少女の姿を、無意識のうちに追いかけているのだ。
もうすぐ母と約束した時間の30分前になる。
ヒロもシュンもマサトも同じように、8時までには帰ってこいと言われていたから、そろそろ解散しようということになった。
しかし、なかなか神社の入り口前から動くことができない。
「いやぁそれにしても楽しかったなぁ! とくに焼きそばがかなりうまかった!」
「もぉ、そればっか。今日シュン焼きそばと金魚すくいしかしてないじゃん……」
「へっへー! なんだマサト! 俺に金魚すくい対決で負けたのがそんなにくやしいのか!」
「べ、別にー? な、ヒロ!?」
「え、えぇ!? いきなり話ふらないでよ!!」
帰ろう、とはなったものの、祭り独特の空気が、なかなか三人を帰路に向かわせない。
そこで、リーダー格のシュンが、三人の会話が滞ったのを見計らい、自分から解散を告げることで、ようやく本格的に帰宅となった。
「…………じゃ、俺帰るわ! またなー!!」
「じゃあ僕も……ばいばい」
シュンに続き、マサトもヒロに手を振りながら帰って行く。
ヒロも本当は帰るべきだった。
――――――――――でも、やっぱり気になるんだ。
ヒロは人の流れに逆らって、境内の奥、焼きそば屋の所へ駆け出した。
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