夏部門 ~紗幕の向こうへ~

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間近で見た少女はどこか儚さを感じさせ、その華奢な体からはどこか懐かしい雰囲気が漂ってきた。 「……焼きそば屋さんの所にいた子、だよね?」 「うん、そうだよ」 少女は普通に答えた。 ヒロはここに来て、何故そんなにもこの少女に会いたかったのか、不思議に思った。 今日初めて会ったばかりの女の子。しかも、言葉を交わしたわけでもなく、ただ目があって、気がついたらいなくなって。それだけの女の子。 ヒロはなんだか急に恥ずかしくなり、言葉に詰まった。 「……あ、そういえば、さっき、かごめかごめうたってた……ね」 「うん、うたってた」 「………………」 再びの沈黙。 すると、今度は少女から話を切り出した。 「あのね、私、あなたといろいろ話したいんだ。……となり、座らない?」 そう言うと少女は祠の石段に腰をおろし、隣をぽんぽんと叩き、ヒロに座るよう促した。 ヒロは恐る恐る少女に近づき、その隣に人一人分の間隔を空けて座った。
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