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「今日はともだちときたんだね」
「……う、うん」
「楽しかった?」
「……楽しかった、よ」
「そう。……なんでここにきたの?」
「なんで、って……なんとなく、気になったから」
「私もあなたのことが気になってた」
「そう、なんだ……」
「……お家、早く帰らなくていいの?」
「なるべく早く帰るようにするよ」
「そうだよね、お家の人心配しちゃうもんね」
少女との会話は、特にこれと言って大切な話、というわけでもなく、二人して夜空を仰ぎながら、静かに問答を繰り返していた。
夏の夜空、しかも田舎の夜空の星達は、まるで自分の存在を主張するかのようにきらきらと輝く。祭りの灯りが届かないこの場所でも、周りの景色が十分に見渡せるほど。
ヒロはそっと少女の横顔を盗み見た。子供らしいあどけなさが残る横顔。そこには、喜びと哀しみを織り交ぜたような微笑みが浮かんでいた。
――――――――君はだれなの?
ヒロはそれをずっと聞けないでいた。
それを聞いてしまえば、この少女はどこかにいってしまう。自分の手の届かない所へいってしまう。
そう、本能的に感じたのだ。
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