第3章

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*フォルトゥナ* PANP! PANP! 遠くの方で、花火が鳴り響いている。外では、軽快なミュージックと人々が賑わう声が聞こえている。 カリン 自宅アパートーー…… 1DK、洋服ダンス、小さな丸いテーブル、全身鏡、そして窓辺に色とりどりの花、少し大きめのベッドが1台という、白をベースにしたシンプルな8畳程の部屋。カリン、24歳。身長145㎝という小さな女の子。オレンジ色のボーダ服と、サスペンダーを取り付けた紺のキュロットを履いている。腰まである長い茶髪を丁寧にブラシでとかしていた。 今日は、年に一度行われるフォルトゥナ祭だ。自由参加で、地方からも遥々とやって来る人達がいる程、かなり盛大なお祭りである。町の端から端までに出店が並び、メインは『クラウンクラウン探し』というゲームだ。 カリンは、とかした髪をトレードマークの大きな御団子ヘアーに作り上げていく。 時計をチラリと確認すると、もう間もなく9:00になるところであった。 今日は、2年ぶりにプラトセンタ専門学校時代の先輩である、アルトに会う日であった。特に時間や場所の約束はしていない。いつでも、無計画で直球勝負、それがアルトのスタイルだ。そして、カリンはそんなアルトの性格を熟知している。 大きな御団子ヘアーを完成させると、カリンはベッドに掛けておいた水色のカーディガンを羽織る。 カリン>よし、いくか! カリンは、いつもの赤いリュックを背負い、鍵をもって部屋を出た。 裏通りに位置するカリンの自宅までも、人々で賑わっていた。カリンは、アパートの階段を下りていく。アパートの目の前で、綿菓子を作っているようで、子供たちが群がっていた。店員の顔を覗くと…どこかで見覚えがある赤メガネを装着している。店員が、カリンに気がつく。 赤メガネ>あれ~ぇ!?お客さん、この前の…お客さんじゃないの~?? 一昨日行った、小さな薬局の女の子だ。今日も青髪を二つに結わいている。紺のタブリエにクマの絵のワッペンが刺繍されている。
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